子供にまつわるお金シリーズ⑤ 学資保険
今回の記事では、子供にまつわるお金シリーズ第五弾ということで、「学資保険」についての記事を書いていきます。
学資保険とは
学資保険とは生命保険会社が販売する、子供の将来の教育資金に備えるための保険です。一定の保険料を払うことで子供が一定の年齢になった時に満期金等を受け取ることができるものです。保険ですので、契約者に万が一のことがあった際にはその後の保険料の払い込みが免除されます。
学資保険の返礼率
学資保険は貯蓄性を謳う商品が多く、返礼率は105~110%程度のものが多いです。
ただし、この点注意が必要ですが、この返礼率は10年程度保険料を払い続けて最終的に受け取れる金額ですので、例えば毎年10万円保険料を払って、10年後に105~110万円の満期金を受け取れるということです。
つまり、投資リターンという意味では、年利で考えると1%程度(複数年の支払いで計算が複雑なので概算)と、正直なところ投資としてのリターンはあまりありません。よって、株式や投資信託のような商品と比べて投資自体としての魅力はありません。
学資保険のデメリット
学資保険は途中で解約をすると返礼率が100%を下回ってしまいます。また子供用の保険のため、子供が一定年齢以下(例えば5~6歳以下までなど)までしか加入できない、という条件があり、いつでも始められるものではありません。
学資保険の節税効果
学資保険は税務上、生命保険料控除の対象となります。
まず所得税においては、以下の計算式で控除額が決まります。つまり、80,000円超保険料を払った場合は40,000円の保険料控除となります。
また住民税については、以下の算式で、56,000円超の場合は、28,000円の保険料控除となります。
ここで気を付けないといけないのは、税金計算上、所得控除というのはあくまで税率を掛ける前の計算ですので、実際に節税できる額は、この保険料控除の金額に税率を掛けたものとなります。
例えば、年間10万円保険料を払った場合、所得水準にもよりますが、所得税であれば税率30~40%程度とすると、節税額は12,000~16,000円、住民税については税率10%なので、節税額は2,800円となります。
つまり所得税と住民税の合計で、14,800~18,800円の節税金額となります。
よって、毎年学資保険の保険料を10万円払った場合に、14,800~18,800円の節税、つまり毎年15~19%程度のリターンが得られることになります。
なお、学資保険の受取時に税金が掛かるのか、という点ですが、満期で一括で受領する場合には、一時所得という区分となり、支払った保険料よりも満期金が50万円以上大きくない限りは特に税金は発生しません。(ただし、年金のような形で何回かに分けて受け取る場合などは雑所得などの他の所得区分となる可能性があるので、商品ごとに要確認です)
NISAとの違い
教育資金の準備という意味ではNISAという制度もあります、詳細はまた別の機会に書きたいと思いますが、ジュニアNISAという教育資金準備目的の制度もあります。
NISAの場合は、掛金自体が節税になるわけではなく、運用益が出た場合にその益が非課税となる制度です。
投資信託等に投資しますので、学資保険と比べて高いリターンが得られる可能性があることがメリットです。ただしあくまで投資ですので、増えることもあれば減ることもあります。
当然ながら保険商品ではありませんので、万が一の際の保険機能はありません。
iDeCoとの違い
iDeCoも投資を推進するための制度で、特に教育資金のためということではなく、自分の老後の資金のための積立であり、60歳まで引き出せないというもので、学資保険の代わりにはなりません。
ただし、学資保険とiDeCoは節税という意味では考え方が近い制度であり、会社員かどうかなどによって限度額は異なりますが、iDeCoの場合は全額掛金が所得控除の対象となり、投資対象も投資信託などが含まれるので、iDeCoの方が節税効果が大きい制度です。
学資保険は意味があるのか?
結論から言うと、学資保険は満期金だけを目当てとした投資としては意味がないですが、特に所得税率の高い高額所得者にとっては節税効果があるため、余裕資金があり、他の生命保険などを契約していない方にとっては検討に値すると思います。勿論保険商品としての意味もあります。
ただし、学資保険だけでは(特に節税効果を最大にしたい場合は足りない)教育費を準備するのには十分ではないため使うのではなく、その他のNISAなどの制度も併用して資金準備する必要があります。我が家でも、NISAも学資保険もiDeCoも全て併用しています。
※なお、この前提は保険料支払い期間に亘って毎年一定所得があること、今後も生命保険料控除の制度が継続されること、受取時の課税制度が変わらないこと、などを前提にしているため、それらの前提が崩れる場合はこの限りではないため、制度の動向などには注意が必要です。